歯のもとになる細胞から歯と歯周組織をセットでつくり、移植して再生させることに東京理科大の辻孝教授らの研究チームがマウスで成功した。入れ歯やインプラント(人工歯根)の代替医療につながる可能性がある成果という。13日付の米科学誌「プロスワン」に発表した。

 研究チームは胎児マウスの歯茎から上皮細胞と間葉(かんよう)細胞を取り出して培養し、“歯の種”となる再生歯胚を作製。大人のマウスの腎臓皮膜下に移植し、約60日かけてエナメル質の歯や歯槽骨などからなる「再生歯ユニット」に成長させた。

 このユニットを、歯を欠損させた別のマウスに移植すると、すぐに機能し、かみ合わせができた。歯槽骨は40日であご側と結合。歯には神経と血管が通い、刺激が脳に伝わることも確認した。実験には遺伝的特徴がほぼ同じで、拒絶反応が起きないマウスを使った。

 チームは平成19年、再生歯胚をマウスの歯茎に直接移植する手法で歯の再生に成功したが、かみ合わせができるまで歯が成長するのに約50日かかっていた。

 辻教授は「ヒトの歯が完全に成長するのに4、5年要し、従来法では時間がかかりすぎる。今回の方法は即戦力なので、メリットは大きい」と話す。

 ただ、臨床応用への課題は多い。歯のもとになる細胞は、若年層なら親知らずから見つかる可能性もあるが、成長期が過ぎた大人には存在しない。また、自分の腎臓に移植して成長させる方法も現実的ではない。実用化には人工多能性幹細胞(iPS細胞)で歯胚を作り、皮下や体外で成長させる技術などが必要だ。

 辻教授は「体外で作製できる装置が実現すれば、自分の細胞から作った歯や臓器を自身に移植する置換再生医療が現実味を帯びてくる」と話している。

2011.7.31(C)産経ニュース