亜鉛は不足すると味覚障害や神経系の異常などの症状が見られることは以前から知られていますが、最近の研究では、人の免疫反応において情報伝達物質として活躍していることが発見されるなど、人体にとって欠くことのできない重要なミネラル栄養素です。

したがって亜鉛の不足は健康上の問題であり、米国だけでも約400万人が亜鉛不足による問題を抱えていると言われています。亜鉛は牛肉や卵、ヨーグルト、魚などに含まれておりバランスのとれた食生活を送っていれば不足に悩むことはありませんが、サプリメントで補うことも一般的になっています。一方で、亜鉛だけでなく全てのビタミンやミネラルに言えることですが、必要とされるからと言っても、過剰な摂取は逆に健康上の問題を引き起こす可能性もあります。

米国・メリーランド大学歯学部のJ. A. von Fraunhofer名誉教授らがGeneral Dentistry 2011年3・4月号に発表した研究で、入れ歯(義歯)を使用している人は、亜鉛摂取量に格別な注意を払う必要があることが明らかになりました。

名誉教授らの研究によると、入れ歯接着剤・安定剤には亜鉛が含有されており、特に入れ歯が合わなくなっているような場合は、接着剤を使い過ぎることになりかねず、そうした場合は、非常に稀ではあるものの、亜鉛の経口摂取量が身体に有毒なレベルに達して、神経関連の障害(手足の無感覚、脱力感、歩行困難、などや悪心、胃痛、口のヒリヒリ感)を生じる可能性があるとしています。

名誉教授はそうした過剰使用にならないよう半年毎に歯科医で入れ歯のメンテナンスを行い、接着剤の乱用に結びつかないよう装着感を良くしておくことが大事であるとしています。

医療ジャーナリスト 宇山恵子

General Dentistry 2011年3・4月号