江戸幕府を開いた徳川家康は、歯周病で悩んでいたと言われています。天下を統一し、家康は過度のストレスから、晩年には歯がすべてなくなり、木製の入れ歯を使っていたということです。
人はストレスを感じると、「ノルアドレナリン」というホルモン物質が分泌されます。過度に分泌されると、歯周病菌の発現を促す作用があります。そのため、ストレスが多いと歯周病になりやすいのです。
ちなみに、歯周病は口の中だけの病気ではなく、さまざま全身疾患と関連していることがわかっています。また、歯周病菌は糖尿病を発症しやすく、肺炎や骨粗しょう症なども起きやすくなるなど、さまざまな弊害があります。
ところで、家康の時代に入れ歯があったのでしょうか。実は、すでに木製の入れ歯がありました。しかも、木製の入れ歯は、室町末期からあったという記録が残っています。仏姫という尼僧が、木製の入れ歯を使っていたことから、室町時代の末期には、すでに入れ歯があったことになります。日本は世界より200年も早く入れ歯を作っていました。
当時の木製の入れ歯は「木床義歯(もくしょうぎし)」と呼ばれ、歯の生えていない上顎につけて使うものです。木床義歯は、ツゲや梅、黒柿の木などで作られていました。ツゲには抗菌作用があり、しかも硬くて緻密なので、入れ歯に向いていたようです。
ちなみに、現代の入れ歯は歯科技工士が作りますが、当時木床義歯を作っていたのは仏師でした。
木製義歯の歯の部分には、半透明で柔らかいロウ石が使われていました。また義歯によっては、動物の骨や象牙、人間の歯も使われていたようです。
(引用:幻冬社GOLD ONLINE)