入れ歯技術は当時から世界一

 現代の歯科治療は、欧米から移入された近代医療に基づいているが、日本にはそれ以前から、優れた入れ歯作成技術があったといわれている。現在の和歌山市にある願成寺の尼僧・仏姫が1538年に74歳で亡くなった。

 じつは彼女が使用していた柘植の木で作った総入れ歯が今も残されており、日本で最も古い木製義歯といわれている。奥歯の部分がすり減っていることから、実際に使われていたと推測される。仏姫の顎の形、歯茎、歯に合わせて精密に作られており、当時の「歯科技工士」のレベルの高さを物語っている。

 時代が下って江戸時代にも、精巧な木製の総義歯が作られており、日本は入れ歯技術では当時から世界一だったといえそうだ。その職人魂は、現在の歯科技工士にも脈々と受け継がれている。

※週刊ポスト2014年4月25日号